江戸からの旅立ち。鬼の文脈が顔を出す。
6.手紙
千鶴のテーマ、ピアノソロ。観客的には直前土方がやけに軽い口調だったのでおやぁ~とは思った。やりやがった。いつも通りと信じていたのに、な動きが最後の迷ったような曖昧な音の並び、唐突な終わりに回収される。「納得いかない」をそのまま表現した中途半端さ。テンポはわりと速いのが彼女の焦りとシンクロ。
のちのシーンだと娘姿に戻って、なんとか土方の意向を受け入れようとしてるような…いや「江戸を離れ」には逆らってるので、受け入れなければ/追いかけたいの葛藤のはざまにいるということですね。このお嬢さんぶりすんごい可愛い。襦袢姿とかで髪下ろしは見てましたがやっぱりちゃんと女装(女装?)で見れると一味違いますねえ。
7.相克する誠心
沖田と千鶴、二人の相克。環境音のような掠れた、不安定なピィー…が印象に残る。千鶴が諭す流れになってますが彼女自身も自分を偽ってて、無理に納得しようとしているところがあり、そこで沖田に踏み込み切れなかった場面。悲しいけれどそれに溺れ切らない、そして寄り添う曲でもない。最後も歪な、微かな不和を残して終わる…。
ついったで流れてきた明治初期の板橋の写真、山からの開け感がこの場面のカットそのもので感激しました。そして沖田さん顔色が悪い…とっても…。
8.それぞれの生き方
優しいピアノ。原田優しい。一切棘が無い。こういう灯りにピアノは合う。あっ士魂蒼穹の和みパートってここか!ここだけかー!曲としては初めて聴きます。色々飲み込んでリスタート。”新選組と共に”で表されたカラッとした明るさはなく、じゃあがんばっていこうか、と静かに背中を押す旅のはじまり。サントラ的にもここで一息入れたいよね、というタイミングで入るあったか曲。
映画系のサントラ、カロリー高くてなかなか通しで聴けないんですが、ちょうど真ん中8曲目に癒し曲なのでCDとして聴きやすいんですよね。
9.咆哮
勢い溢れる弦、”京都乱舞”冒頭のアレンジ?半音上がった風に聞こえる、これまた久しぶりの爽快曲。石突ドン!に合わせてカメラが揺れる演出~!!!それまで穏やかな目つきだった原田が一気にギラっと表情を変える、見せ場ですねえ。10秒から入るシャカシャカはマラカスかな、程よい軽さ。28秒で前フレーズからちょっと下がるの好き!そのまま後半不知火!異色のガチャガチャ感が懐かしい。デレレンデレレン。陽キャ×2は画面が明るくなる(夜だけど)。うおーこのままいけー!なんだけど、千鶴が崖から落っこちちゃうので、曲もそれに合わせてうおおい!?な終わり。わりとまじでうおおい!
この崖がどこなのか切実に知りたい。北千住はほーこ様ご参加の朗読イベントに行ったことがあります。
10.鬼と人と
和太鼓は縁を叩いてる時のカッカッも好きです。前半の弦は何の和楽器だろうか。震えを含んだ豊かな音。1:12に入って弦の構成が変わりメロディ中心になっても和太鼓は全く変わらないリズムを刻むところたまらなく好き。これまでとこれから、登場人物は交代しても歴史は変わらず流れていくんだな、という。無常さと力強さ。
風間と千鶴二人の会話。対風間だとびみょーに千鶴の声が低くなる。すき。立体的な関係。
11.始まりの場所
~27秒、東北への旅路では広大な音。高く澄んだ空。秋。最後のコーラスの畳みかけがすっごく川井先生っぽい。
一転凝った雪村の里の空気。高くも低くもない笛に聞き入る。1:03の一瞬の揺れが特に好き。ゆっくり朽ちていく、戻ってこない営み。「おかえりなさい」にしては重苦しく、そこには誰もいない…。
薫登場、鬼のテーマ1″運命の夜”。
同じ場所で、重なるけれど違う曲が流れる。兄妹の溝は埋まらないまま3:56まで。「兄なんていません」の感情的な拒否は前シーン「もっと綺麗な場所だったのに」が、「今の」千鶴が感じた疑問形だったのと裏表…知識としてあるけれど、自分の体験という実感がないんだなあと…。かつてを惜しむ悲し気なピアノ。ここへきて初めて感傷的な音が来た…。
5:03-鬼のテーマその3″薄闇の鬼神”
5:22まで歪んだウキウキ、地に足ついてない薫。やっぱり変若水って良くないよ。そこからは風間憤激に対応する低めのコーラス。しかし戦いは彼の一閃で終わる。6:00からは静かに夜の森に溶けていくようで、同族へ、許される精一杯の哀れみという体。
12.野望の果て
かなり重要な事実が明かされたり事態が二転三転したり。でも4分34秒しかなかった!情報量が多い…。
淡々。低い音を基調にしているけれど、右を向いて左を向いて、自分の心をどこに置いたらいいかわからなくなる不安定さ。特に出だしのギターの使い方、神経に触れるような。悪い人だったのか信じてたのにいい人だったのか疑ってごめん!!
山南の種明かしに合わせた爽やかさ、うおおここから反撃!!だったのにー!!暗転、終焉。満足に悼む間も与えられないけれど、二人は進む…
3:41-ここ太鼓なのがいかにも「処刑」て感じで迫力。
3:49-脱出に向けて。身軽な平助、羅刹化してさらに三次元的な動きをするようになって、曲も音域の移動が激しい。スピーディー!うわあ!な緊張を風間の登場が断つ。一気に重くなる。ほんとこの人登場すると一気に重くなるな音が。
千鶴と薫と両親、どんな家族だったのか。思い出さなかったのは、風間による綱道の殺害に対して、悲しみをこらえながら、納得し、むしろ感謝し頭を下げる…一連の千鶴の心の動き、その重みを際立たせるためかなと思いました。
綱道の死は千鶴にとって間接的ではあるけれど「親殺し」。その前に実の両親という強力なルーツが明確に描かれていたら、彼らが「善き親」という新しい拠り所になる。「綱道が父」という意識のまま彼を拒むから、無意識な頭領の資質、風間が七重浜で引き留めるに至る関係が際立つ。
だから実の両親には具体的な思い出、輪郭がなく、ぼんやりとした「道を踏み外さなかった誰か」な概念にとどまったのかと。TV版のように「自分の記憶」だったらまた違ったかもしれない。
一言で言え?「父を止めて下さって、ありがとうございました」の一連の表情の変遷と間と落ち着いた声がすんごい好きということさ。