19.薄闇の鬼神
前半は沖田による残党狩り、バックの曲はゆらーっと単調、ホラーではあるけど感情的にならない、なんでもないこと。羅刹に変じたとはいえ再び戦える喜び、近藤を傷つけられた怒り、二つの感情が正負のバランスをキープする。
メインは「闇より来る者」から派生なような独立してるような。鬼のテーマその3とします。テンポは速い。激しくも不気味より、このテーマを基礎に高い弦で同じ旋律を繰り返し、闇の中いいように、振り回されている。決してヒロイック・肯定的ではない。いっそうねっとり感が増した。
ここ音の見せ場は沖田ですねー。それまで理性の端っこで均衡を保っていたのが、主犯が明確になったことで一気に声が歪む。「僕は君を殺せれば」の抑揚、一回下がって跳ね上がる動き。言葉も息も生きている。
特典おまけの絵コンテ、二人の表情が凶悪も凶悪で、そうかーチューニングされてるんだーとしみじみ。
20.決戦へ
前シーン、土方のカットから曲を始めるところが好き。
弦の忙しなさ、コーラスが上下の空間を生む。悲壮感を煽る。メロディーとしては全くこれまでにはない流れで、新選組がよりどころにしてきた刀や槍といった古式ゆかしい戦い方が強力な砲弾で蹂躙されていく図と同調する。
32秒、平助の一閃に合わせてシンバルが力強い!でもそれは一瞬の響き、間を置かず自分の変化に揺れ、今度は控えめな音が滲んでくるような広がりで「どんどん人間じゃなくなってく」が悔しく…でも最後30秒、ちょっと上を向いてるような…。
こういう鉄火場組、突っ込む斎藤・永倉も、殿をつとめる原田も、それぞれ役割を果たす姿はかっこいい。
21.想いの側で
メインテーマアレンジ。それをバックに身もふたもなく言えば敗走。斎藤の張った声は珍しいなあ。「決戦へ」のシーンもですが、直前の台詞が油小路なので、復帰後ちゃんと現場に馴染んでるのねという安心もくれる。テンポはこの1分4秒の中で時間・空間が随分移動するのを受けてか、ゆっくり目。食事シーンを通じてそれでも皆進んでいる、まだ戦う…という意思のシーンでもあるので、あまり悲愴に寄りすぎない。14秒から音が高くなるところとか、前向きじゃないですか。
最後の和やかシーン。曲は重いけど、素直な永倉、気遣いを忘れない原田、しれっとマイペースな斎藤、食事をめぐるシーン…こうして表に出ていられるメンバーもずいぶん減っちゃってね…。
22.時代の行方
ドン、よりバン…な西洋の響き。これは官軍。マーチの気配。それを受けてメロディーは勇壮ながらネガティブ…居丈高…どこか不安定な足場ですね。特に30秒から52秒にかけて、上ずったところから降りてこない。浮足立っている。全員の狼狽。
52秒からは外へ、錦旗を見下ろす構図と、ジャーン…という絵と音それぞれの広がり。でも心は重い。
「敵が官軍で、我らが賊軍」鳥羽伏見に入ってから斎藤は短くも印象的なセリフが多いですね。土方に絶対的に忠実で、思想信条からは割と距離を置いているように見える彼がここまで動揺するのが新鮮。これも会津で誠の旗を掲げることへの…フラグ…。
23.誠の武士
大トリ。これまで幾度かアレンジされてきた作品のテーマですが戦闘時そのものに使われたのはこれが初。華やか…。「想いの側で」からあまり間を開けず使われますが「また?」とはならないし、むしろ気付いた時は「ここにも!」という再会の喜び。
前半2:10までじっくりしたテンポでオーケストラ。もはや落ち着きさえ感じる。力強さより優しさ、井上そのもののようにテンポはゆったり穏やか。その分コーラスと合わせて流し込まれるメインの力…!32秒からはもう質量をもって迫ってくる曲、対照的に転がる瓶の軽い音…命…その対比よ。
間奏 ピリピリ高まっていく緊張を次の場面へ手渡す役割を果たす。ズドンズドン。打楽器は遠くの砲声か、心臓の音か。一回シャーン…で終わる瞬間が好き。来るぞ来るぞ。
3:12 ここからとにかく目まぐるしい。土方VS風間がこのままいくかと見せかけて、3:23(土方が撃たれてから)は「決戦へ」での羅刹組パートと似てる気もする…中音域で控えめな弦はどんどん流れ出す血のよう、千鶴の頑張りめちゃくちゃ可愛いシャーシャー猫っぽくて、4:30はこれ限度あるのかという勢いでコーラスが高まり、限界を迎えて一気に解け…。
音の切れ間が怖い。一線を超えた感。
5:09~5:40土方のもはや誰に言うでもない独白。無音から独奏がゆっくりゆっくり音域を上げて…
圧
文字の大きさで逃げるとは貴様サントラ語リストのプライド捨てたか。
ハイもはや語るも野暮かなというしくしく心をねじ伏せて、シンバルからコーラスがメイン、やっぱり人の声は強い、吹奏楽系も参加してハーモニー、第1章の集大成がここにある。パートとしては5:50あたりで一回落ちるところが好きです。ヴァイオリンが同じモチーフで並走しその忙しなさに耳を向けるのも好きです。戦いの激しさとともに合流、上昇、ドカーン!!語彙!!!
曲としては「ここから~!?」な所で終了。今はまだ一章の終わりです。おお、終わった…のか…な余韻。
ビジュアルは鬼/羅刹になるわ、背景は白黒に歪むわ、土方は瀕死からの羅刹化でラリ…肉体的な緊迫感、臨場感が声に乗りボルテージ最大だわ、風間はブチギレ唸り声からの絶叫だわ、クライマックス怒涛の演出盛り盛り、をさらに掻き立てるこのアレンジ。いやも…すき…。
特典おまけの絵コンテだとに土方を案じる千鶴、そして「千鶴」呼びをする土方が居て、カットされたのがもったいを超えたもったいない。劇場版の最大の謎、「いつから千鶴呼び?」は遅くとも鳥羽伏見のころですね。ここで気が緩んでそのままなし崩し的に定着したんかな。
なお千鶴の腕を吊る風間への感想ですが、12年前の「小学生?」を添えておきます。風間もこの状況にテンション迷子になってたのか…一番は「くだらない人間/それに入れ込んでいる愚かな娘」という印象が態度に直結していたからと思われますが。だからって暴力はダメよ暴力は。でも土方の発進(特典台本原文ママ)で千鶴をぽいって放るところ好きだよ。