14.油小路の変
コントラバスから?策謀の夜にふさわしいトーン。腹にくる。雪を踏みしめる足音。提灯が落ちる和紙の音が混じる。カメラワークは地面から空へ縦移動。そして襲いかかる複数人の動きに合わせてメインが高く響く!
アップでの伊東の笑み、これがまた獣じみていて、彼も幕末の熱気にあてられた一人の剣客、死地にあって抑えきれない昂りなのであります。舞台を退く伊東への手向け、な華のある終わりでした。最初以降は後ろに引っ込むコントラバスですが、それでも一定のテンポで同じモチーフを奏で続け、「伊東さんぶれんかったなあ」と振り返らせてくれます。
土方「詳しいことは後で説明するが…伊東さんには死んでもらう」凄み…。でも劇場土方の律義さ、言い換えれば可愛げ…でもある。 この「詳しいこと」は脚本的には投げっぱなしなのよ。もちろん最低限語るべき経緯(殺られる前に殺る)は直前に述べていて、あえて尺取って説明してもらうようなことかといえばまあそれはね。土方は大事なことを事前に決めちゃうし、覆さないし、でも秘密主義ではないよという…不器用さですかね。
15.目覚め
新しい生へようこそ。変若水を飲んだ平助の目覚め。ピアノ中心で柔らかく優しく、命をつなぎとめた二人の安堵。ほ…。
とはいえ28秒では一瞬低く不安げに揺れ、しかしまた元の音の流れに戻る。楽器の構成も同じ。精一杯の誠実さとお互いへの労り。二人ともどんどん人間らしい生から自分が遠ざかっていくのを実感しているけれど、それでも何も変わらない。
16.出陣
体感、ここからラストに至るまで無音なシーンはかなり絞られる。Cパート、鳥羽伏見の戦い、京都との別れ、新選組の終わりのはじまり…の、序曲と言ってもいい位置づけ。34秒とごく短く、勇ましい太鼓、同じメロディーの繰り返し、感情の揺れよりも闘争を掻き立てる力強さ。近藤の張った声がまた合う…。
17.再会
「出陣」の余韻から、鈴を使った音のリレー。チリン…。肌身離さず持っていたお守りの鈴が、まるで薫に変化したような登場…始まり「運命の夜」以来の鬼のテーマをバックに伏見稲荷へ。すうっと消えて、千鶴のテーマに。かなり低い弦だから最初分からなかった。この低さは位置づけるなら彼女の根源、自己認識か。
ここはね、綱道と確信した後の、細く柔らかな、新選組には見せなかった微かな甘えの声がもー可愛い。すぐに表情ごと切り替えてぴりりとした切実さでもって「羅刹を元に戻して」と頼むギャップ。健気…!!に一切絆されない綱道おめえすげえな。白状パートで表情をコロコロ変える薫が可愛い。
テーマとしては変わらず彼女のものが使われるが、重苦しく、信じていた父親との関係がもうここにない、千鶴を構成していた土台が侵食されていく。重いコントラバスは安定ではなくしがらみ。受け入れがたい父の変貌に向けた千鶴の「それなのになぜこんなことを」が、叱りつけるような語尾の下がり方でとても良い。高い声がこういう低く重い曲を打つ展開は映えるね。
(レッツ三者面談)
「久しぶりだな」とまず挨拶から始めるところ、土方の江戸っ子らしい強がり、粋?でもドン…ドン…の太鼓は怒髪天を衝く3秒前。こわい。彼が身内相手に声を荒げるのは、激しいけど副長らしく「叱る」ムーブが基礎にあるんですよね。一方綱道に向けてのこの態度は、完全に敵。怒鳴る相手ですらない。地の底から響くような、声と楽器が絡む。
お互い見ているものが違いすぎる三者面談、ビリビリした高音低音の齟齬…をメインテーマで締め!うおー!出てこれるみんなー!!ここでふん縛っておけば…!!!
パパの若いころのビジュアルは割と気になる。頑張って悪い顔してる+ちょっとやつれ気味なだけで柔和で端正だと思ってる。
18.願い
全編千鶴のテーマアレンジ。アレンジもとはしっかり呼吸して歩いているテンポでしたが、こちらは感情を辛うじて言葉にしていく、一歩一歩意識しなければ動けないぐらい。本人も口惜しさ情けなさ申し訳なさを凝縮した「ごめんなさい」以降、ただ涙。千鶴の「すみません」「ありがとうございます」は他に聞く機会があるけど「ごめんなさい」はけっこうレアだ。そこまで感情の起伏が激しかったり、また駄々洩れというわけでもない特に劇場版では(特典ドラマCD含む)。
「久遠の誓い」では正面から刃を向けた土方は、今度は背を向ける。その信頼。セリフとしては彼も半分ぐらいあっていやもすーんごい優しい。ここで千鶴から、か細くも確かな「一緒にいたい」と本心を引き出すウワーこの色男場慣れしてやがる。
58秒までピアノソロ、そこからハーモニーになるのが、「ここにいる」とお互いの心が重なった…というのでいいですねえ…。
状況的に土方が千鶴の部屋に様子を見に来た(千鶴は灯もつけず塞いでいた)、という流れかと思いますが、終わりに源さんが「トシさんはいるかね!?」と駆け込んできた様子なので、「励ましに行ったの知られてるんだ…公認なんだ…」になりますね。いや状況。