薄桜鬼~新OVA

薄桜鬼シリーズ、録でも抄でもない、アニメオリジナルエピソード。
・茅花流し、雲隠れの刻
・宵闇、夕顔別当の燈
・星迎え、雲漢の調べ
はあ、美しい…。タイトルだけで美しい…。
ついったや他の感想でけっこう擦ってるのですがここであらためて、アニオリであることに焦点を当てて…でも通しタイトルないんですか!?ほんとに!?

「なんだ雪村、また使いだったのか?」 「ええ…お疲れ様です」
OVA薫くんには堂々と門から入ってほしい気持ちをいい双子の日に託した。

<視点>
 薄桜鬼の特徴、原作が乙女ゲーム。
 待って下さい、ブラウザバックしないで。視点は千鶴の基本一人称固定というのを言いたかったんです。
 OVAは度々カメラを千鶴から外し、さらに特定の誰かにフォーカスしない構成がこれまでにないところだなと思いました。「○○と千鶴の物語」×6だった雪華録とはまた違った形の群像劇。本編時間軸原作では視点を担う主人公ゆえの特別さ(声がついてないとかな(血涙))を担う千鶴が、ここでは他のキャラクターたちと等しく物語の中にいる。カメラに写ってなくても確かにいる安心と信頼。
 結局OVAは千鶴含めて、新選組サイドとしては誰が何のためにこんなことしたのかはさっぱりわからず終わるのですが、むしろそこが好きです。この時代の手探り五里霧中感、とにかく目の前の問題に対処していくしかない忙しなさとリンクしてるようで。恨まれる心当たりも山とあるというのも含めて。

<オリキャラの扱い>
 酒井兵庫氏、まだcvも明らかにされないうちからキャラデザ一本でグッズに参戦した男。

その意気やよし。


 いざ本編では、1章の給料前借りにあたっての半眼で一気に好きになりましたね。めっちゃ気骨あるぞこの人。ラジオでは「こういう人も必要だよね(桑島さん)」「いたはずなんだよ(三木さん)」にワイもニッコニコ。掴みが強い男!でも柔和糸目イケメンとか絶対怪しいわーと思ってたんだごめんね
 対照的に2章ではほぼ出番なく、クライマックス3章では「オリキャラが原作キャラボッコボコ」という字面を抜き出せば「やっちまったなあ」な展開でしたが、その前の追い変若水でゲストイケメンにあるまじきムキムキ×顔面崩壊ぶりを見せてくれて、これギャグに片足突っ込んでないか、美形羅刹に漂う一瞬の儚さどこいった!?桜の花というより根っこだよ!!な暴力全振りで「ここまでしなくても」…とその思い切りに感動しました。よくよく振り返ったらED絵からすごい暴だった。
 というのはともかく、ストレートに絵面を悲劇の美形で通さなかったというか、あーここまで崩すんだと、もともとバトル物の文脈で観賞する作品ではないですが、ぼろぼろになっちゃった原作メンズとつり合いが上手いなーと思いました。
 そんな風にわずかな出番で馴染んできた酒井氏。最後に絞り出した「雪村君は、無事ですか」がただ仲間を案じる彼の善性として成り立つのも、そういう嫌味の無さと言うか、「体張ってるなあ」という応援したくなるところも大きいのかなと思いました。くそう生存ifが欲しいぞ。

<カメラワーク:トップ3会談>
近藤/「会津藩の立場を危うくするわけにはいかん」
 色々あるんですが、新選組の描写として「おお」と思ったのがここ。
 千鶴・酒井の捜索を内々に済ませようと腐心してきた土方が新たな犠牲と手がかりを前に「一戦ぐらい交える覚悟で行かねえでどうするよ」…血の気!直前には手順を重んじ沖田に自制を求めてたけど、彼もまた我慢の限界。本当は熱い男なんですなあ…というのもあるんですが、隊士の命に責任があり、その重みを忘れない土方にとって、ここは絶対に引けない場所。がみがみ叱るだけじゃないのだ。ここで土方を「諭される」ポジションに置くのが、近藤が世話を焼かれてることが多い原作本編ゲームだったりTV版だったりとは違うなーと。
 そして近藤も、むしろ彼こそ内外の立場を意識したストーリーが付きまとう人…ここにすっごく天雲の波動を感じます。3章でいよいよ脱走隊士の制圧となった際、まずは自分も動こうとするところが大将。伊東を警戒する土方の言を容れるのも大将。なおその伊東、「珍しく土方君の声が荒々しく響くものだから」から「いつも私抜きで何かやってるでしょう?」を見出すのに4年かかりました
 千鶴の視点で固定するとこのエグゼクティブ層の会議は難しくなる。何でもかんでも同席しない、その奥ゆかしさこそ千鶴の魅力と説得力で、その遠慮こそが近藤たちの良識なんだけど、物語的には説明不足だったり歯がゆかったりですから、こうやって物語の幅が広がるのを感じられるのはいいですね。

<原作サイドからのアンサー>
天雲の特典、全て「千鶴に説明してる」シチュではなくて、一体全体どういう視点で見るべきか迷子だったのですが、この事件の描写で理解しました。

そう、「OVA知ってるよね」という原作サイドからの応援の心を。


・表向きは大きな事件はなかった
・帳簿が合わずに脱走、沖田が連れ戻して死罪…ということになっている
・言える事実は「買い物の途中」に行方知れず、その後死亡が確認される
・「かの者の最後の姿が羅刹だったのか」
…奥歯にものが挟まったような、てこんな時に使うんやなあ!

 他の事件では動機や経緯など、新選組が関与した疑われた点を述べる「仮にも恋愛ゲームの特典がこんなにパッサパサしてるの攻めすぎじゃねえか」/「十鬼もこんなんだったわ」仕様でしたが、酒井兵庫脱走事件だけは「言いたくても言えないんだけど分かるよね?」な…湿度が!特に最後、羅刹に至ってはあまりに唐突すぎてね。それまで「ら」の字もなかったのに!でもOVA履修者にはあるのだ「あの姿確かにおかしいわ」な共通の認識が!

  とここまで妄想できるのも、薄桜鬼がこれまで原作サイド・アニメサイドがお互いリスペクトしあってる様子をインタビューとかで見せてくれてきた信頼があるからですね。本当に、心が洗われるんですよ。本当に…救い…(重いよ)。