サイ兄ちゃんの成長

「ヒヲウ、待ちなさい!」 6割ぐらい困り顔なお兄ちゃん、でも苦労人とはちょっと違う感じ。

サイは年長者として一行のまとめ役で、ストーリーにおける常識の守護者。蓬莱村が襲撃されたときは「お役人に助けを求める」、旅に出た当初の目的も「父ちゃんに相談しよう」…疑問を挟む余地ゼロ、常識そのもの。ずっと落ち着いて見えますが、振り返ると序盤はその裏返しか、まだ「子供」であると自覚してるゆえの慎重さのような、遠慮がちなところもあったように見えます。

具体的には5話でテツとショウブはこのままフク夫婦に育ててもらった方が幸せかも…という、視野が広く現実を見てしまう物分かりの良さですね。ここで最終的に二人はなんとか自力で合流するわけですが、サイのほうも彼らを迎え入れたことで、崩れ落ちるフクを目の当たりにしたことで、「この7人でたどり着く」と彼の中で腹が決まったように見えました。地に足ついた生活を二人から奪うことになっても、自分たちで生きる…マユとともに頭を下げる姿…立派すぎる。

フクのほうも、悲しさ寂しさ悔しさを行き来した表情で最後に絞り出した言葉が「みんな、仲良くね」だったところにギリギリのプライドと祈りを感じるのです。それはヒヲウたちにしか与えられないものだから。

そしてここであらためて一行を再結成した次の回に「誰一人欠けてもダメだった」山越えを配置する構成の妙よ。わりとヒヲウの爆発ぶりに隠れがちなサイが「絶対にやり抜く」と図面を引き、大人たちと交渉する…しかもそれは唐突ではない。彼ならやれる、やってくれると自然にしみ込んでくる活躍でした。

一行が幕末動乱に巻き込まれていく中、サイ自身が騒動の中心になるような無理なお当番回がなく、安定してみんなを守り続けたお兄ちゃん。癒し。サイがいるなら大丈夫、をずっと積み重ねていきました。一行の父役というポジションをこの1~6話という序盤の成長でしっかり確立していたからこその説得力なんですね。でもそんな彼にも「一人の少年」に戻る瞬間が来るのだ。