元治元年 夏

副長として舵をとる土方に「それどうなん」と積極的に口に出す立ち上げメンバーは沖田、山南、そして永倉です。沖田は個人的な人間関係の話、山南は羅刹隊を率いるようになってからの対立がメイン。新選組の運営という目線から物言いをする、という役どころは永倉が担っている

この季節の特色は、他がなんやかんや巻き込まれたことにどう対処するか?という流れなのに対して、一つの事件を二人の当事者から描くというものなので、感想もまとめて書いていきます。

〇発端

いやー、出だしからちょっとずつ亀裂が顔を出してくるのがキリキリきますね!新選組のこれからを考えるうえで、作法を始めとしてどうしても足りないものがある。人手不足もそう。それを何とか埋めていかなければ…というところになあ!めんどい連中がなあ!

〇アプローチ

「この現状を何とかしなければ」「近藤をまっとうに盛り立てよう」というのは土方も永倉も共通して認識しているところなんですが、前者は「変わることで乗り切る」なのに対して後者は「かつての精神を取り戻そう」なの本当に対照的。そしてぐいと踏み込めるのはやはり永倉の方で、当てつけじみた門限破りもしましたが、「会津藩を巻き込む」というに至る思い切りはやはりすごい。現状打破のためなら自分の命すら賭けのテーブルに載せる。それは折り目正しいものではなくても、彼の一番の強さであるひたむきさそのものです。

〇聞く力

話を聞いてもらうことで自分の思考が整っていく」という点は共通。千鶴自身が彼らの問題を解決することはできない。でも、それには聞き手が誰でもいいわけではなくて、「誠実に自分を見てくれている」という信頼があってこそ。付き合いは短くても、この時点で秘密を開示しあってはいなくても、すでにそれだけの理解がある、という千鶴の佇まいに心が洗われる。「ちょっとは信用してほしい」なんて言うぐらいなんやね土方…その他ルートだと露骨に土方が「信じてない」という目で千鶴を見るけど…やっぱり選択肢の度にそこに至る過去、築いてきた関係性が丸っと変わってくるんやな…。

〇カタルシス

武田に見とがめられた千鶴を土方が「俺の小姓だ、俺の指示だ」と乗っかったところ。これまで「立場にふさわしい振る舞いを」と縛られていた土方が、ここで千鶴のそれを利用して、彼女の行動に牽制の意味を与える。あまりにも美しい。直前には「隊士からの聞き取り」という地味ながら重要なタスクをこなしており、その動静の対比もとてもよい。やはり反撃こそ至高

なお小姓としての立場を自覚しろ、というお叱りがその前(永倉門限破り時)にあったわけですが、それを踏まえてなお千鶴は情報を得ようとして、それが土方にとって「嬉しかった」(好感度上昇)というのが全てだと思います。別の選択肢では「(小姓である以上)もし見つかったら大ごとになる」というリスクから踏み出せなかったというのがこれまたよいですね。「見つからないように頑張る」という江戸の女パワープレイは土方クリティカルです。

〇そもそも

今回、永倉筆頭に幹部陣がぴりついてた理由の大部分に「クソ暑いのに忙しい」があったとしても何ら疑問に思わない、なんなら親近感がわく令和7年目の夏です。(8月末、過去最長真夏日。夜明け前なのに暑い。虫の声も困惑してるような気がする。頼む9月から秋フル稼働してくれ)

「土方さん、お茶をお持ちしました」
「おう…いや、ちょっと待て」
とっさに見せてはいけない書類を避ける というのは警戒からか巻き込むまいという好意からか。同じ動作でも距離感で意味付けが変わってきますね。あとこの手描きたいなあと思った。

<味わいメディアミックス>

1.残った信頼

アニメでは土方の情けないところは全然ですが、碧血録(17話)は自暴自棄…からの光明。あああ千鶴のたどたどしくも誠実な励ましと献身「あなたは信じられている」という。弱みを見せることを厭う土方ゆえに、ここで千鶴だけでなくいろんな人に思いっきり世話になって、肉体的なところからも吹っ切れたというのがありそう。自分を大事にして、というお叱りが自己肯定感どん底なこの時期ぶっ刺さった。憑き物が落ちたような笑顔が印象的です。あ~もっとじっくり見たいこの日々。

2.ポテンシャル詰め合わせ

雪華録原田編。ラストで原田を「何かわけがあるんだろう」と庇いつつも、処分自体には抗議しない永倉。そのあとのフォロー(呑み)も自然体。冒頭サシ吞みでは原田のほうがどっしり構えてる姿勢だったのに締めでは永倉のほうが重々しい。最後ちょっと軽いところも含めて、攻略ルート前からそのまっすぐさ、裏表の教養と思慮の深さ、ちょっと抜けたところから、説明役もけん引役も三枚目もなんでもござれなこれは…脚本で禁止令を出される男…

3.伏見稲荷で三者面談

京都乱舞。ここで新選組特に土方が保護者面してるのが味わいポイントです。しかしながら、流れとしては千鶴を餌にしゃべるだけしゃべらせたうえで出てるんですよねかーっお人が悪いお人が悪いよ副長!永倉も「そりゃ、親子の対面だから?」と冗談めかしたような響きと凄みの両立がしびれますね。